ガイ・リッチー監督の傑作クライム・コメディ「ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ」を観ただろうか?非常に独創的で構成も緻密!
そんなこの映画の感想や、時系列での出来事、傑作の理由を説明していく。
ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズの個人的感想
ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズは、いわゆる”悪いイギリス”の雰囲気がふんだんに詰まっていて、構成が非常に巧み!そうくるか!という感心とシュールな笑いがギュッと詰まっていて最高だった!
ガイリッチー特有の作風は初監督作品のロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズから炸裂、次作のスナッチで完成したといいだろう!
スナッチも最高だが、ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズも独特の雰囲気があって、この2作品は本当に、甲乙つけがたい!
ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズの凄いトコ
ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズは優れている点はいくつもあるが、特にすごいところは次の3つだと考える。
- 登場人物の人物の関係性
- 次から次へと主導権が移っていく、
- シーンでの辻褄の合わせ方
登場人物の人物の関係性
- エディとドッグがの部屋が隣同士
- エディの父親JD(スティング)と、ポルノ王ハリーの間に古い因縁がある
- ロリーとベーコンたちが酒場で会っている
- JDとクリスが知り合い
- ベンツ兄弟がポルノ王ハリーのことを知らない
このような、無知や偶然が一連のストーリー形成をしている
無知や偶然は、人間が生きていれば、よく目にする馴染み深いものだが、映画に持ち込むのは難しい。偶然そうなりました!では、よほど設定や演出を上手くしないと、観客が納得するような話にならないからだ。感動も作りづらい。
しかし、ガイリッチー監督はあえてこの、無知と偶然を武器に傑作を作り出した。タランティーノの影響を受けている部分もあるだろうが、それにしても見事である。
次から次へと主導権が移っていく、
骨董品の散弾銃(ショットガン)、大麻、大金が次から次へといろんな人物の手に渡っていくのが面白い。映画における主導権が移っていると解釈するとさらに興味深くなる。
シーンでの辻褄の合わせ方
ドッグたちとロリーたちの銃撃戦で、脚本的にドッグだけを生き延びさせなければならないときに、ロリーは実にあっけなくて、それでいて、面白ろい死に方をする。
ガイリッチーが演出する、登場人物の死に方が、みんなダイナミックで見事なので、勢いを付けて次の展開に持ち込むことに成功している。
ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズを時系列で整理
ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズは相関関係が非常に複雑なので、細かい部分がよくわからない!という方もいるかもしれない。そこで、なるべくわかりやすように、時系列でストーリーをまとめてみた。
- エディ、トム、ベーコン、ソープは金を出し合い、ハリーのところでポーカーするが、イカサマされ多額の借金を抱える
- ポルノ王ハリーが、右腕のバリーに骨董品の散弾銃を盗み出すよう命令
- バリーは、ベンツ兄弟に、富豪の屋敷から散弾銃を盗むよう命令
- ベンツ兄弟は、間違ってニックに骨董品の散弾銃を売る
- ニックがトムに散弾銃を売る
- バリーはベンツ兄弟に散弾銃を取り返すように命令
- ドッグ一味がウィンストンたちから、大金と大麻を奪う
- 隣に住んでおり、作戦を盗み聞きしていたエディたちが、ドッグたちから大金と大麻を奪う
- エディたちはニック経由で大麻を麻薬王ロリーに売ろうとする
- 麻薬王ロリーはウィンストンたちの親元であり、ブチ切れてエディの家に突入
- ドッグたちは隣人が大麻と大金を奪った犯人だとわかり、ブチ切れてエディの家で待ち伏せ
- ドッグ一味とロリー一味がエディの家で鉢合わせし銃撃戦。ドッグ以外全員死亡
- ハリーの手下クリスがエディの借金回収に来て、ドッグから大金と散弾銃を奪う
- クリスがハリーに大金と散弾銃を渡す
- ベンツ兄弟が散弾銃を奪うためハリーを襲撃。4人死亡
- エディたちがハリーのところで大金と散弾銃を発見
- クリスが脅しにきたドッグを殺害
- クリスが突っ込んだ車にエディが乗っていて気絶、大金を発見し、ハリーに返しに行く
- 金を持ったクリスと、散弾銃を持ったトムがハリーの部屋で鉢合わせ、二人は引き下がる
- 一連の事件で釈放されたエディたちは、トムに証拠品である散弾銃を捨てるよう指示
- クリスはJDの圧力で、エディたちに散弾銃のカタログを渡し、価値を教える
- エディたちはトムに散弾銃の破棄を中止させようと電話を掛けたが、トムはそれを川に落とす寸前だった。
映画を観た人なら、この時系列でわかってもらえると思うが、まあ複雑である。
この、複雑さがつながっていく過程が、ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズの一番の魅力だろう。
日本でいうところの、わらしべ長者を、さらに複雑にして、シーンごとに、シュールな笑いを盛り込んだ、という感じだろう。
ガイ・リッチー監督の脚本能力とセンスはグンバツだ!と言わざるを得ない。
何故、悲劇(喜劇)が起こったか?
何故、ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズで、エディたちの都合のいいように、で死体の山ができることになったのだろうか!?
先ほどの時系列のストーリーを考えると、大きく二つの転換ポイントがあることに気がつく。
ひとつめは、バリーがベンツ兄弟に散弾銃の形状や価値を教えなかったということだ。
ベンツ兄弟に持ち逃げされたくなかったからだと思うが、ベンツ兄弟は骨董品の散弾銃をボロだと思って、ニックに売ってしまった。
ここから、散弾銃の持ち主がコロコロ変わっていき、最終的にポルノ王ハリーがバリーの親分だと知らないベンツ兄弟が、ハリーの部屋を襲撃し、結果的にそこにいたバリーも巻き込んで4人全員死亡というシーンにつながる。
二つ目はエディたちやニックが、大麻栽培者のウィンストンたちと麻薬王ロリーがつながっていると知らなかったということ。
これによって、ドッグの一味と、ロリーの一味が、エディの家で鉢合わせして、銃撃戦になるという笑える悲劇が完成!
エディの部屋と、ドッグたちの部屋を隣にしたところが、シナリオの素晴らしい部分だと思う。ガイリッチーすげえ!!
タイトル ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズの意味とまとめ
ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズはどういう意味か知っているだろうか?
一切合切、という意味の慣用句、ロック、ストック アンド バレル(lock stock and barell)(銃の構成部品で、これで全部という意味)と、
今回の話で鍵となった、2丁の散弾銃が煙を吹いている様子→トゥー(二つの)、スモーキング(煙)、バレルズ(銃身)
を組み合わせた言葉である。いわばガイ・リッチーのシャレが効いた造語だ。二丁の銃ですべてが台無しなった!といったところだろう。
ガイリッチー監督は、怖いもの知らずの若者、マフィア、強盗、盗み人、取り立て屋などの普通の題材を用い、昔ながらの教訓めいた話で骨格を作り、無知と偶然で肉づけてして素晴らしい作品を作り上げた。
まさに、映画における造語を発明したといっても過言ではないだろう。