デヴィッド・フィンチャーの『ゲーム(1997)』は3つのオチが序盤でわかる。そして『セブン(1995)』のアンサーソング

デヴィッドフィンチャー監督の映画ゲーム

「人生が一変するような素晴らしい体験ができる」

奇才デヴィッド・フィンチャー監督の『ゲーム(1997)』は、3つのオチが序盤から提示されている、面白い構造のサスペンスだった。つまり、3つのオチを観る側に選ばせるフィンチャー流の“ゲーム”が仕掛けられているのだ。

提示されている3つのオチとは一体何なのか?そして、名作『セブン』のアンサーソングになっている点にも触れてみる。

ゲームの主演のマイケル・ダグラス

※ネタバレあり

『ゲーム』の3つのオチとは?

映画『ゲーム』のラストのオチは騙された!となった人が多いと思うが、実はオチは3つのうちから選ぶ形式になっていたのだ。その3つとは、

A.本当にゲーム

B.詐欺集団の罠

C.主人公が狂っている

というもの。大きく分けるとこの3つになる。

AパターンはCRSという会社が提供するサービスが本格的すぎて、登場人物が全員グルだというもの。Bパターンは詐欺グループが主人公のニコラス(マイケル・ダグラス)を狙っており、登場人物の一部がグルだというもの。Cパターンはニコラスだけ気が狂ってしまっただけというもの。

通常、サスペンス映画ではオチがまったく想像つかないことが多いけど、『ゲーム』の場合は「オチは3つのうちどれかだよん〜」と序盤から提示されているところが画期的なのだ。

映画ゲームのポスター

芸術的なポスター。名画モナリザの質感をイメージしているのだろう。

『ゲーム』のラストはAパターンの連続

『ゲーム』のラストは、ニコラスが屋上でシャンパンを持った弟を撃ってしまい、ショックで屋上から飛び降りるが、大きなクッションが敷かれており、下の階のラウンジでみんながニコラスの誕生日を祝うというもの。

「Aパターンだったのに、トラブルで悲劇になった」→「それも仕掛けでみんなでお祝い」という、Aパターン失敗と見せかけてからの、やっぱりAパターンという結末。Aパターンを連続させることでオチの細部の予想を防いだ。

Aパターンを予想してた人にも、意外性を与えて楽しませてくれている。

“ゲーム”のプレイヤーはフィンチャー自身

映画ゲームのワンシーン

この『ゲーム』という映画は、3つのオチを観る側に選ばせるフィンチャー流の“ゲーム”だと説明したが、フィンチャー自身もゲームのプレイヤー的な目線で映画を作っていたように感じる。

フィンチャーは、映画を撮ったり編集したりしながら、「ここで観客は『オチはCパターンになる』と騙されるだろうな」とほくそ笑んで楽しんでいたのだ(おそらく)。

僕ら視聴者は、3つの選択肢をフィンチャーの手のひらの上で終始コロコロ転がされていたのだろう。デヴィッド・フィンチャーはやはり奇才と呼ぶにふさわしい監督である。

『ゲーム』は『セブン』のアンサーソング

デヴィッド・フィンチャー監督の『ゲーム』の前の作品が、ブラピ主演のかの有名な『セブン』。『セブン』は超悲劇的な結末になっていたが、『ゲーム』は対照的に希望のある終わり方になっている。フィンチャーは『ゲーム』を『セブン』と対になるアンサーソングのようなイメージで作ったのではないだろうか。

セブンのブラットピット 映画ゲームの終盤のマイケル・ダグラス
  • セブン→犯人は一人、ラストは悲劇
  • ゲーム→犯人は全員、ラストはハッピー

対になっているのはこの辺だろうか。しかし、それ以上にフィンチャーはセブンとは趣向を変えて、絶望からの希望を描いてみたかったのだと思えてならない。

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フリーライター/映画評論家/沖縄県在住のアラサー男子 誕生日は3月27日でクエンティン・タランティーノと一緒。 中学のとき、友だちに『シックス・センス』のネタバレをされトラウマに。バンドや作詞作曲活動も行っており、2019年は田港栄輝監督の『ストレプトカーパス(2020年公開予定)』という映画への出演と楽曲提供をしました。 傑作映画を求めて彷徨うムービーファントムであり、どんなジャンルにも食いつきます。“どのサイトにもない考察”を目指しており、その映画をもっと深く知りたいという人の手助けをするために日々奮闘しています。 好きな映画は『マルホランド・ドライブ』『ユージュアル・サスペクツ』『パルプ・フィクション』。好きな監督はデヴィッド・リンチ、マーティン・スコセッシ、クエンティン・タランティーノ。 【海外ドラマ】『ウォーキング・デッド』『ツイン・ピークス 』 【マンガ】『ジョジョの奇妙な冒険』『ハンター・ハンター』 【音楽】NIRVANA、プリンス、ブルーノ・マーズ