スタンリー・キューブリック監督のシャイニング(1980)は名シーンの宝庫と言える映画である。この記事では、実際にGIF画像で名シーンを振り返りながら、考察や、裏話を解説していく。
(シャイニングの続編『ドクター・スリープの解説記事』も!)
下記はシャイニングについての僕のツイッター。
11/29日公開の『ドクター・スリープ』の前に、『シャイニング』を超早送りで復習しよう!※まだ観てない人はじっとみないでください。 pic.twitter.com/DQrRJ7mc3J
— コーヒー&ベルベット/CineMag(伊良波航太) (@movie_crisis) November 27, 2019
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壁から覗き込む狂気のジャック!
最も有名なこのシーンにかけた時間は?
ホラー映画のアイコンともいえるこのシーン。映画シャイニングを観たことがない人も、ドアの裂け目からのぞかせる、ジャックの狂気の顔には見覚えがあるだろう。
キューブリックはこのシーンに190テイク、およそ2週間かけたという。マジで完璧主義者の鬼畜である。
ジャック・ニコルソンも、憔悴してマジで狂っていたのかもしれない。そこまでやるからこそ、歴史的名シーンが生まれたのだろうが・・・
衝撃的な双子ちゃん
キューブリックの映像の構図は、シンメトリー(左右対称)になっていることが多いが、幽霊まで双子にしてシンメトリーにしてしまうアイデアは素晴らしい。
そして、青い絨毯や、壁の模様にも注目してほしい。絨毯が敷かれていない空間や、薄紫の模様なども、シンメトリーの構図を作るのに一役買っている。
恐怖ですくむはずのシーンなのに、なぜか嬉しくなってしまうのは僕だけか?
エレベーターからの血の洪水
有名なエレベーターの血のシーンについては、どのように撮影したか、調べても詳細が出てこない。キューブリック監督のことだから、エレベーターの通り道から実際に赤い液体を流したのだろう。
このシーンも撮り直ししているだろうが、白い壁についてしまった血は拭いたら落ちるものなのか?ワザワザ壁紙張替えとかやってそう・・・スタッフも掃除だけで気が狂うほど大変だろう・・・
それにしても、頭で考えるとすごくグロテスクなはずなのに、極上の赤ワインを飲んでいる気分にさえなれる。とても素晴らしいシーンである。
三輪車でホテル内を一周するダニー
三輪車でホテルを一周するダニーを後ろからずっと追いかけるこのシーン。観ていてとても心踊るような、ダニーに迫る恐怖を表現しているような、二重性のある名シーン!
撮影方法も画期的で、ステディカムという、当時最先端の手ブレを防止するための装置を使い。さらに、床下6cmで撮影しているのだ。
だからこそ、三輪車をこぐ子どもの目線が意識できる映像になった。シャイニングは本当に、名シーンの宝庫である!
狂気のジャックを下から撮影!
ウェンディに倉庫に閉じ込められて、ドアを開けろと怒るジャック。狂気のジャックを真下から見つめる映像もまたオツで革新的である。
このシーンはキューブリック監督が床に寝転ぶカタチでジャックの下に潜り込んで撮影している。
下からのアングルを、下に潜り込んで撮影する。キューブリック監督は単なる完璧主義者ではなく、アイデアも豊富で、柔軟性もあると理解できるシーン!
All work and no play makes Jack a dull boy
ウェンディがジャックがタイプライターで書いたものを見てみると、そこには「All work and no play makes Jack a dull boy」という文字しか書かれていなかった!
ウェンディがめちゃくちゃ恐怖を覚えたシーンであり、タイプライターで書いた何枚もの紙に全部この言葉が書かれているので、「ジャックが初期段階から狂っていたんだ!」と観客も戦慄するシーン。
しかし、冷静に考えてみると、少し笑えるシーンでもある。キューブリックが、恐怖とシュールが混在するようなシーンを作ったと考えてよいだろう。
ちなみに、「All work and no play makes Jack a dull boy」は日本語で「仕事ばかりで遊ばない、ジャックは今に気が狂う」と非常に上手い訳が当てはめられている。
「All work and no play makes Jack a dull boy」は本来、英語圏のことわざで「子どもを遊ばせないとバカになる」→「よく学びよく遊べ」という意味なのだ。そのまま訳してしまうと、味気ないし怖くもない。
このシーンではレイアウトの違う「All work and no play makes Jack a dull boy」の羅列が何枚も登場するが、女性スタッフが頑張って全部(数百枚分)タイプライターで書いたらしい。スタッフの陰ながらの努力が功を奏したシーンである。
REDRUM(レッドラム)
シャイニングは鏡を効果的に使った演出でも有名だ。鏡に映っているのが現実ですよ〜ということを表している。
そして、このシーンはダニーが「REDRUM(レッドラム)」という意味不明な言葉をブツブツ呟きながら、ドアに書き記す。ウェンディが鏡ごしにそれをみると、「MURDER(殺人)」となっている、とってもこわ〜い言葉遊びである。
遊び心を感じながらも、心は凍りついてしまうような、キューブリックらしい二重性のあるシーン。
迷路で凍てついたジャック
ジャックはホテルの外の迷路で迷い、最後は凍りついてしまった。しかしこのシーン。冷静にみてみると、完全にギャグっぽい顔をしていないか?
もしかして蝋細工!?と思えるようなジャックのこの表情!詳細は出てこなかったが、ジャック・ニコルソン本人がやっていたとしたら、すごすぎる!表情をここまで固定できるものなのか?
この凍ったジャックのおかしな表情からも、キューブリックがシャイニングを単純なホラー映画として作っていないことがわかる。本当に作品に多様性を持たせるのが好きな映画監督だ・・・
シャイニングの名シーンについて
シャイニングは名シーンの宝庫だ。ストーリーを追わなくても、映像を観ているだけで、充足感がすごい。この記事では紹介しきれなかった映像も多いが、全ての場面が名シーンだと言っても過言ではない。
何か芸術的なものに触れたいのであれば、是非シャイニングを見返してみよう!