オーソン・ウェルズの市民ケーン(1941)という映画を観た!
とても挑戦的でジャンルレスな映画だと感じた。いわば社会派ファンタジーといえるだろう。
新聞社を経営するケーンという男の物語なので、てっきり社会派のヒューマンドラマかと思っていたが、最後は、なんかファンタジーチックに終わるのだ。テーマも社会派ではなく、人間の根幹についての話である。
歴史的名作といわれる、市民ケーンのテーマとは何か?チャーリーとチョコレート工場とどこが似ているのか解説していく。
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市民ケーンのあらすじ概要
チャールズ・フォスター・ケーン(オーソン・ウェルズ)という新聞王が、城で「バラのつぼみ(rose bud)」という言葉を残して死んで行った。
記者のトムスンは、バラのつぼみという言葉の意味と、ケーンがどんな人物だったか確かめるため、生前のケーンに近しい人物に取材をしていく。
トムスンは話を聞いているうちに、ケーンがどこか感情が欠落した人物だとわかり、バラのつぼみは彼の人生に必要だったピース(破片)だろうという結論に達したが、バラのつぼみの詳細は不明。
ケーンの城で執事が、生前ケーンが集めたガラクタを焼却炉で燃やしていく。その中に、”ROSE BUD(バラのつぼみ)”と書かれた子供用のソリがあった。ケーンが子供のころ、暴力を振るう父から逃れるため、母親の考えで養子に出される前に乗っていたソリである。
めちゃくちゃ重い市民ケーンのテーマ
市民ケーンというからには、市民とか民衆がテーマなのだろう!と思ってたら全然違う。
あくまでケーンという人物がどういう人間だったか!?というストーリーで、他の人間にはほとんどスポットが当たっていない。
そんな「市民ケーン」という映画のテーマは何なのか!?
いろんな意見はあると思うが、僕は、子どもの頃欠けたピースは一生戻らないだと思う。
友達でも、仕事でも、富や名声でも、結婚でも、たくさんの美術品でも、贅を尽くした大きな城でも、どんなものでも、欠落した感情は埋められないのだ。
子どもの頃に母親から愛情ゆえ引き離された。その結果ケーンは最後まで満ち足りることはなかった。彼が求めていたのは、子ども時代に充分受けられなかった母親からの愛情や、楽しく遊んだ思い出だったのである。
母親からの愛情の欠落は、大人になっても尾をひくという、とてもリアルで、人間の根幹に根ざした暗いテーマだったという印象。はっきり言って絶望である!
市民ケーンはチャーリーとチョコレート工場に似てる?
一体全体、市民ケーンはどこが、ティム・バートンのチャーリーとチョコレート工場(2005)に似ているのか?
まず、ケーンとウィリー(ジョニー・デップ)はとてつもない大富豪という点が似ている。
そしてケーンは理想の新聞社作り、ウィリーは理想のチョコレート作りに没頭しているという点も似ている。
ケーンは謎の大きな城、ウィリーは謎の大工場にいるという点も似ている。
さらに、人としての感情が欠落していて、他の人と噛み合わないという点も似ているし、それが父親のせいだということも似ている。
大きな違いは、ウィリーはチャーリーと仲良くなり、チャーリーの家族と一緒に暮らし、自身の父親と和解するというハッピーエンドで終わるが、
ケーンは欠けたピース(感情)を埋められないまま、誰もが彼の元を去り、大きな城で孤独に死ぬというところだ。
以上のことから、「市民ケーン」は、チャーリーとチョコレート工場のダーク版!だと言えるだろう。
ケーンが本当に不憫でならない・・・市民ケーンには心をえぐるものがある。
ロアルド・ダールが1964年に発表した原作絵本の「チョコレート工場の秘密」は、市民ケーンを参考にしているか分からないが、ティム・バートンはもしかすると、ウィリーとケーンを重ね合わせたかもしれない。
市民ケーン歴史的な大悲劇
市民ケーンは、人間として欠落してしまった感情は埋めることができない!
とずばり言い切っているような気がする。自分のせいでなく、親や環境のせいでそうなってしまった人間について、夢も希望も救いようもない話だった。
しかし、悲劇物語としては極めて完成度が高い!
現代映画のお手本のような、その撮影技法などが注目されているが、市民ケーンのこのような超悲劇的ストーリーが、観る人に大きなインパクトを与えたことは無視できないだろう。
家族の絆が希薄化した現代人が根幹に持つ、心の大きな隙間に気づかせてくれる、だからこそ市民ケーンは真の名作と呼ばれるのかもしれない!