ロリータ(1962)が社会や文化に与えた影響の真実!アメリカン・ビューティーとの関係性!無料で観れる?

ロリータ

スタンリー・キューブリックは、作品の幅が広すぎる監督である。

2001年宇宙の旅はSF、時計仕掛けは社会派、シャイニングはホラーといったことからわかるように、ありとあらゆるジャンルを自分流にしてしまう稀有な存在である。

そしてなんとこの監督は、「ロリータ(1962)」という、少女に対する偏執的な愛を描いた、ロリコン映画まで作っている・・・恐ろしや。もはや人間性が怖い。

今回は、そんなロリータに込められたメッセージや、他の映画に与えた影響などを語っていく。

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映画ロリータはロリコン文化の原点!?

幼女を好きになってしまう男性を表す、ロリコンという言葉を知らない人はいないだろう。

ロリコンを訳さずいうと、ロリータ・コンプレックス。

このロリータ・コンプレックスという言葉は、ウラジーミル・ナボコフの原作小説が元になっている。

その小説を、ウラジーミル・ナボコフ本人による脚本で映画化したロリータは、ロリコン文化の原点ともいえる作品なのだ(脚本はかなりキューブリックが削ったらしいが・・・)。

小説と共に、幼女愛という、ひとつの概念と文化を形作った作品。

映画が文化を作り上げたと考えると、この「ロリータ」という映画の重要さがわかる!

ロリータとハンバート

ロリータは映画アメリカン・ビューティーにも影響を与えた

ロリータは、一見すると、社会派のヒューマンドラマ的な映画だが、内容は実際コメディそのものだ。

明らかにおどけた表情を見せ、ここで笑ってくださいというような、わかりやすいコメディではないが、ロリータと一緒にいたいがために、母親であるシャーロットと結婚するハンバートの一連の行動は、ちょっと考えると、爆笑コメディそのものではないか。

ハンバート

ハンバートが真面目にシャーロットの死を願う姿がめちゃくちゃ面白い!

映像自体はシロクロだし、どちらかというと、軽さというより重厚感が漂っているのだが、冷静に考えてみると爆笑!そんな雰囲気の映画が他にもあった気がする?そうだ、サム・メンデス監督の『アメリカン・ビューティー(1999)』だ!

アメリカン・ビューティーのワンシーン

アメリカン・ビューティーも、ロリコンが表層的なテーマの作品であること、ヒロインの高校生アンジェラ・ヘイズの名字“ヘイズ“”は、ロリータの主人公、ロリータ・ヘイズから取っていることからも、影響の強さが伺える。

しかし、アメリカン・ビューティーが、ロリータから最も影響を受けた部分はどこか?と考えたとき、編集作業ではないか?と思いたった!

アメリカン・ビューティーは、サム・メンデス監督が編集の際にサスペンス風にしようか?コメディ風ににしようか?かなり迷った結果、社会派の重さと、コメディの面白さが組み合わさるような唯一無二の映画に仕上げたそうだが、これは、ロリータを参考にしたのだと思える。

社会派とコメディの間の子、その原点がロリータであり、アメリカン・ビューティーにもつながっていったと考えると興味深い!

映画ロリータのメッセージとは?

スタンリー・キューブリック監督は、二重性を持たせるようなメッセージの伝え方をするので、単純にロリータのテーマはこれです!と決めてかかるのは危険なのだが、2つ考えてみたので読んでもらいたい。

  • 年齢が下であっても、恋愛で男性は女性にかなわない
  • 若い女性を崇拝する中年男の愚かさと異常性

表層的なメッセージはこんな感じだと思う。

簡単にいうと、この映画で男性の穢れなき女性崇拝の裏側を見せたかったということだろう。

日光浴するロリータ

そして、ロリータは全然ロリコン映画ではない!と言っている人もいるし、素直にみると確かにそうみえなくもない。

しかしキューブリックは、年下女性に対して、なんら良心の呵責なく、何がなんでも手に入れようとするハンバートの清々しいまでの心意気を描くことで、逆にロリコンの異常性を際立たせていたと思う。

ロリータはロリコン映画→あれ、ロリータも高校生だしロリコン度低い→義理の娘にまでして執着する姿は異常!

裏の裏は表だよ!みたいなイメージだ。

ロリータの脚

だって、キューブリックはそういう意地の悪さがある監督だからだ。そこが魅力なのだけれでも。

クレア・クィルティ=ハンバートの理性

ロリータが本当に好きだった男性としてクレア・クィルティなる人物がおり、最後はハンバートに殺されてしまうのだが、ロリータと泊まったホテルにクィルティもいたり、心理学者として登場したりと、少し謎めいた存在だ。

キューブリックはクレア・クィルティをハンバートの理性として描いていたのだと思う。ハンバートの影を、彼の理性であるクィルティがつきまとっていると考えると面白いし、辻褄が合う(実際にクィルティが存在し、ずっとハンバートやロリータをストーキングして執着しているという設定には無理がある)。

自分からロリータを引き離したのもクィルティだ。つまりは、ハンバートの理性なのだ。

そう考えると、クレア・クィルティを射殺したハンバートは、自ら自我を崩壊させたといえるだろう。

キューブリックはロリコンを忌み嫌っていた?

キューブリック本人は、ロリコンに対してどう思っていたのか?

映画ロリータを観てもその答えはわからないが、晩年のアイズ ワイド シャットに出演したニコール・キッドマンによると、「キューブリックは富豪たちが集まる幼児愛好会の存在を忌み嫌い、それを伝えたかった」ということなので、元からロリコンとかそういった小児性愛について嫌悪感を持っていた可能性はある。

当時の社会情勢も相まって、ロリータに性描写などのシーンを入れることができず、コメディ寄りの仕上がりになったが、艶かしい脚のシーンなどをみる限り、性的な表現をできる限り頑張ってはいたのだろう。

キューブリック自身は元の構想では、ロリータに性描写をしっかり入れて問題提起したかったのだと思う。

ロリータとプリンス

めちゃくちゃマニアックな発見だけど、実はかの有名なミュージシャンプリンスも、ロリータの映画のセリフをそのままサビに引用し、その名も『Lolita(ロリータ)』という曲を作っている(名盤「3121」に入っている。気になったらYOU TUBEの下記の音源を聴いてみよう)。

サビは、Lolita you’re sweeter! But you never make a cheater out of me!

日本語訳すると、ロリータ、君は誰よりも可愛い。でも、僕を騙して心や金を手に入れることはできないよ!というシニカルな感じか。

ダンサンブルな音楽に、映画のように甘くいかないよ!というメッセージが乗っかっている。

映画でロリータが、ハンバートが書いたポエムに対して、「Lolita you’re sweeter みたいな単純な韻(いん)みたいで古い!」と語っていたセリフから借用しているのである。

映画が撮影された1962年当時古いと言われたセリフを、今風にアレンジしちゃうのがプリンスなのだ。

プリンスがキューブリックのロリータを思い出しながら歌詞を書いていたかもしれないと考えるととても感慨深いし、音楽と映画がいかに密接した文化かがわかる。

『Lolita(ロリータ)』という曲の背景で、映画ロリータのワンシーンが映っていると想像すると、曲がまた一段とスペシャルなものに感じられないだろうか。

映画ロリータのまとめ

キューブリック監督の映画「ロリータ」について、 ロリコンの原点だということ、テーマの考察、アメリカン・ビューティーに与えた影響、音楽に与えた影響などを書き連ねたが、どういう感想を持っただろうか?

ロリータは、観る人によって全然違う輝きを放つ映画だと思う。

あなたの目にはどう映ったか、あなたはどういうメッセージを受け取ったか、再度考えてもらうと新しい発見が得られるだろう!

飴を舐めるロリータ