『博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか』
(原題:Dr. Strangelove or: How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb)
タイトルが異常に長い・・・。
『愛のままにわがままに、僕は君だけを傷つけない』よりも全然長い(笑)
そんな『博士の異常な愛情』の感想を語っていく。
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人間のアホさを最大限引き出した映画
『博士の異常な愛情』よりも、人間がアホに見える映画を僕は知らない。
いきなりトチ狂ってソ連へ核攻撃の命令を出すリッパー准将。
国が滅ぶかの大ピンチに愛人に気を使うタージドソン将軍。
体に障害があり、ナチス式の敬礼をしてしまうドクター・ストレンジラブ(ピーター・セラーズ)。
ドクター・ストレンジラブの持論では、放射能の影響で、地下に100年間住まなければならないとなるが、軍隊や政府の高官が優遇され、一夫多妻制になると知ると、笑顔をのぞかせるアメリカトップ一同。実に終わっている・・・
『博士の異常な愛情』は核戦争が始まるときに、円卓で危機感の無い話し合いをしている米国トップたちという、対比がとても素晴らしい。
「Gentlemen, you can’t fight in here! This is the War Room!(作戦室で戦争は困る!)」という、名台詞も飛び出す。作戦室で戦争は困る!って・・・めちゃくちゃ面白いかつ強烈なセリフじゃん!笑いを通り越して戦慄を覚えてしまう。
ちなみに博士の異常な愛情は、もともとシリアスな内容にする予定だったらしいが(原作は真面目な作品)、キューブリックが脚本の執筆途中で、コメディにした方がいいと思いついたようである。前作はロリータだったので、キューブリックはコメディモードだったのだろう。
なるほど、コメディの要素がありながら、シリアスに考え込ませてくれる部分もあるという2面性を持っている映画なのだ。
そういった理由から、この『博士の異常な愛情』の風刺映画としての評価はめちゃくちゃ高く、海外のレビューサイト、ロッテントマトでは99%の支持、AFIによるアメリカの喜劇映画ベスト100でも第3位に選ばれている。
キラーエイプ仮説を映画で実践!
『博士の異常な愛情』では、ちょっとしたボタンのかけ違いから核戦争が起こってしまうまでの様子を描いた映画であるが、根底にはキューブリックが信じていたある説がある。
キラーエイプ仮説をご存知だろうか!?1953年に人類学者レイモンド・ダートという人物が発表した仮説で、祖先(猿人)が今の人類に進化できたのは、敵を殺す凶暴な本能が備わっていたからだというもの。
ちなみにこのキラーエイプ仮説は現在では否定されているが、キューブリック自身は熱心に信じていたらしい。
『博士の異常な愛情』、『2001年宇宙の旅』、『時計仕掛けのオレンジ』は、キューブリックのSF3部作と言われているが、キラーエイプ仮説に基づいた3部作だと、映画評論家の町山さんは言っていた。
敵の種族を殺す棍棒から核兵器へ・・・そう考えると恐ろしい。
博士の異常な愛情まとめ
最高の、冷戦・核戦争風刺映画として、人間の怖さと愚かさを教えてくれる映画として、『博士の異常な愛情』は最高の作品だといえるだろう。
人類が起こした争いを俯瞰でみると、案外この映画のように見えるのかもしれない。そう考えると、『博士の異常な愛情』で笑ってばかりもいられないかも!