オープン・ユア・アイズやアザーズの監督であるアレハンドロ・アメナーバルが久しぶりに作り上げた長編サスペンスということと、イーサン・ホークという僕の大好きな俳優が出ていることで期待して観てしまったリグレッション(regression)という映画。
超駄作という訳ではないが、オチにはすこぶるガッカリさせられた。それも含め、この映画の超微妙な点とその理由を書いていく。
ここから先はネタバレ有りになりますので、まだ観ていない人は注意してください!
中盤がずっと幻覚状態のイーサン・ホーク
イーサン・ホーク演じる主人公のブルースは警察官で、父親に暴行されたと証言するアンジェラ(エマ・ワトソン)の家族の周りで起こったとされる悪魔崇拝的儀式について調べているのだが、途中から彼まで精神的に疲れて幻覚を見始めるようになる。
そしてなんと、中盤はブルースが数回に分けて、様々な幻覚をみるというシーンがほとんどを占めている。
悪魔崇拝的な事件というワクワクする話題をぶら下げておきながら、ずーと幻覚を見てるぜってゆう展開はとっても退屈で、中だるみ感が半端ない。序盤は面白そうな始まり方をするのに。
リグレッションの最悪なオチ?
リグレッションのオチは個人的にはかなり最悪な部類に入る。ネタバレを書いてしまうが、そのオチとは、実はすべてアンジェラの狂言でした!というもの。
それまで、真剣にこの映画を観ていた僕の純粋な気持ちを返却してほしい。
もう少し詳しく説明すると、まず、アンジェラという少女が警察や教会で父親に乱暴されたと嘘をつく。父と祖母が悪魔崇拝的な儀式に関わっていると、当時出版されて社会現象となった悪魔崇拝の本の流行に乗っかって証言したため、ブルースや警官たちはみんな騙されて悪魔崇拝者に攻撃されるという恐怖に駆られていくというもの。
最後はブルースがアンジェラにカマかけをし、嘘を見破るのだが、被害者が嘘をついているというオチは、視聴者がまず初めに想起することだし、しかもそれをヒネリなくやってしまったので、2010年代のサスペンス映画のオチとは思えない。
大風呂敷を広げられてワクワクしていたら、中からいらないビー玉出てきましたみたいな印象で、とにかくガッカリ。
イーサン・ホークやエマ・ワトソンついて
イーサン・ホークはビフォア・サンライズ、ガタカ、トレーニング・デイなど素晴らしい映画で名演を見せてくれた僕の大好きな俳優の一人なのだが、彼が主演の映画で、最後に面白いと思ったのが、6才のぼくが大人になるまで。
それ以降観たパージ、リミット・オブ・アサシンなど、ハッキリ言ってつまらない。最近彼が出ている映画で面白いと思ったものが少なくなってきているので、早く良作に恵まれてほしい。
アンジェラ役のエマ・ワトソンについて思うことは、美女と野獣もそうだし、今作のリグレッションについてもそうだが、ハリー・ポッター以降いい作品に出ていないな〜というものだ。
リグレッションに見どころは集団ヒステリー?
僕みたいな、どこの馬の骨ともわからん人間にボロクソに言われてしまったリグレッションにも、もちろん映画として素晴らしいところはある。
それは、集団ヒステリーの描き方である。アンジェラというエマ・ワトソンが演じる少女の嘘に、社会的に悪魔崇拝が話題になっていたという環境が加わると、優秀な警察官や、牧師さん、心理学者がコロッと騙されて、さもそれらが本当にあるかのように錯覚してしまうという一連の流れが上手く描かれている。
アンジェラのように、罪のない家族を警察に売り渡すような、
悪意の純度が高い人物が、被害者になりすまし、ありもない敵を作り出してしまったときに、本当の意味で恐ろしい宗教のようなものが誕生してしまうのだろう。
そう考えるととても興味深いし、それを提起してくれたこの映画の素晴らしい部分であると思う!