デヴィッドリンチが熱い!最高の映画監督の一人だろう。
この監督ほど”不和”を融和させられる人はいない!
今回は同監督の奇作『ブルーベルベット』の面白さの秘密を語ります!
そしてこの映画は、秘密を彩る挿入歌も最高!
ブルーベルベット未鑑賞の人は簡単なあらすじや映画の見どころなどを読んでください。
この映画を深く考察したい・思い出したい・ネタバレOKな人は読みたい項目からどうぞ!
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ブルーベルベット あらすじと予告動画
ハンサムな好青年ジェフリー(カイル・マクラクラン)は、父が急病で倒れたのを機に、大学を休学して田舎に帰郷。父の病院へ行く途中、人間の”耳”が落ちているのを発見し、警察署のジョンに相談する。
ジェフリーは”耳”が一体どんな事件に関わっているのか知りたくてしょうがなく、ジョンの自宅に尋ねて操作の進展を聞くが、首を突っ込むなと言われ何も教えてくれない。ジョンの家を後にしたジェフリーにジョンの娘であるサンディが歩み寄り、ドロシー(イザベラ・ロッセリーニ)というジャズバーで歌う歌手が事件に関係しているという盗み聴きした話を伝える。
ジェフリーは好奇心に駆られ、ドロシーが住むディープ・リバー・アパート701号室に侵入を画策。。
ブルーベルベットの見どころ!
2面性を持つ不可解な登場人物
登場人物は皆、一見”不可解”とも取れる2面性を持ち合わせています。通常映画ではあまり登場人物を複雑な性格にしません。登場人物に相反するパーソナリティ(性格)付随させてしまうと、ストーリーの邪魔になったり、わかりにくかったりするので、意図的に排除するのです。
しかしブルーベルベットはその2面性を大胆に取り込むことで、観る人を惹きつける事に成功しています。
絵的な描写
デヴィッド・リンチ作品はどこを切り取っても立派な”絵画”として楽しむことができます。何気ないシーンも絵を観るような感覚になるため、時間があっというまに過ぎます。
ブルーベルベットの音楽と歌
主題歌の『ブルーベルベット』は、元はボニー・ヴィントンという男性歌手のヒット曲(記事後半のトリビアの項目で解説)で、劇中では、挿入歌として流れたり、登場人物のドロシーが歌ったりするのですが、この”クラシックな名曲の持つ古き良き日常性”と映画の”非日常性”の乖離が映画に深みを与えています。
ブルーベルベット84点評価の理由
映画の各要素(10点満点中)
ストーリー | キャスト(ハマり役) | テンポ | 演技・シーン |
7 | 8 | 8 | 9 |
セリフ | 映像の見やすさ(構図) | 音楽・音響 | 印象度(記憶に残る) |
8 | 10 | 10 | 8 |
序盤・中盤・ラスト(5点満点)
序盤 | 中盤 | ラスト・結末 | 話の筋が通っているか? |
4 | 4 | 4 | 4 |
ブルーベルベットは何点!?
各要素と、序盤・中盤・ラストの合計を100点満点とし計算しています。
アイデンティティーの点数は、
合計84点 Aランク! ☆4.2
その他の要素
ブルーベルベットは発想や登場人物がぶっ飛んでます。特に登場人物の人柄についてのアイデアは唯一無二でしょう。
世界観や映像は非常に独特で、観る人を魅了します!特にブルーが美しい!
全体を通してサスペンス調ですが、サスペンスが主なテーマではなく、メッセージ性が強い映画なので、映画マニア向きです。
ブルーベルベットのキャストや製作陣
ブルーベルベットの制作陣や基本情報を押さえておきましょう!
監督
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主要キャスト
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公開年
製作国 |
興行収入(円)
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受賞歴 |
デヴィッド・リンチ | カイル・マクラクラン イザベラ・ロッセリーニ デニス・ホッパー |
1986年
アメリカ |
10億円 | 全米映画批評家協会賞 |
脚本 | 美術 | 音楽 | 主題歌
|
デヴィッド・リンチ | – | アンジェロ・バダラメンティ | Blue velvet |
主演のカイル・マクラクランはリンチ作品の常連で、人気ドラマの『ツイン・ピークス』にも出ています。
名優デニス・ホッパーも大胆な役柄で出演。
音楽はこれ以降リンチ作品の常連になるアンジェロ・バダラメンティ!
主題歌は『ブルーベルベット』
渋い俳優陣と輝く名曲、さらにリンチ独特の構想やブルーの色使いによって、この映画は良い意味で非常に独特な世界観を持っています。
ブルーベルベットは観るべき?
マニア向きかな〜と思います。人の不可解さや、善悪の2面性といった抽象的なテーマが核になっているので、答えも自分で見つけなければなりません。
ただ、主題歌・挿入音楽は非常に素晴らしく、映像もブルーなど原色を大胆に使った非常に絵的なものなので、音楽やアートが好きな人は観る価値が非常に高い作品です!
※以後ネタバレになりますので、まだ映画を観てない人は絶対に次の項目には行かないでください!
ブルーベルベットあらすじ結末(ネタバレあり)
ドロシーが住むアパートに侵入したジェフリーは、クローゼットの中から驚きの光景を目にする。ブルーベルベットのスカートを履いたドロシーが、フランク(デニス・ホッパー)という男性の言いなりになり、性行為を強要されていたのだ。一連の会話から推測するに、ドロシーは弱みを握られて脅されているようだ。ドロシーはフランクに殴られることで快感を覚えていた。
フランクが帰った後、ジェフリーはドロシーに見つかってしまう。ドロシーはジェフリーに刃物を向けながらも彼を気に入り、ジェフリーはお咎めなく部屋を後にする。
ジェフリーとサンディはお互いに惹かれ合っていたが、ジェフリーはアパートで目撃したことを話しながらも、全部は明かさず、ドロシーと肉体関係を持つ。ジェフリーはドロシーが行為中に殴ってと言われる事に戸惑いを感じる。部屋には、旦那と子供とおぼしき写真があった。
ジェフリーはフランクのアジトや仲間について調べて写真を撮り、警察署のジョンのもとに向かうが、警察にもフランクの関係者と見られる黄色い服の男などがおり、相談出来ず仕舞い。挙げ句の果てにドロシーの部屋に来たフランク一味に見つかってしまい。車で連れ出される。
車で向かった先は、”粋”オカマたちの住処で奥の部屋にはドロシーの子供が拉致されているようだ。その後車で向かった先の空き地で、ジェフリーはフランクから激しい暴行を受ける。
ジェフリーは仲が深まりつつあるサンディの家へ行き、ジョンに相談しようとするが、ジョンを家に迎えに来たのは黄色い男だった。
サンディと一緒に町を歩くジェフリーを、サンディの彼氏たちが嫉妬から襲撃しに来たが、そこに現れたのはなんと素っ裸のドロシーであった。サンディの家で介護しようとするが、ドロシーの発言から、彼女とジェフリーの関係がサンディにバレてしまう。
ジェフリーは直感的にドロシーの家族に何かが起こっていると悟り、アパートへ向かう。アパートで見たものは、”片耳がなく”椅子で拷問されて死んでいるドロシーの旦那と、立ったまま銃を持って死んでいる”黄色い服の男だった”ジェフリーは無線で助けを求めるが、無線機持って会話を聞いていたフランクがアパートを駆け上がってくる。ジェフリーが無線でベッドの下に隠れていると言ったため、フランクはベッドの下を調べるが誰もいない。クローゼットに近づいて来たフランクをジェフリーが撃地殺した。
ジェフリーとサンディは事件を乗り越えて交際を続ける。
ドロシーは笑顔で帰ってきた息子を公園で遊ばせるのだった。
ブルーベルベットの”面白い描写”
ジェフリーの父が倒れた時、芝生の下では昆虫が争っている
主人公の父が芝生で水撒き中に倒れるシーンがあるのですが、このとき芝生の下にもスポットが当たり、昆虫たちが争っている場面があります。
他にも希望の象徴として描かれている鳥が、グロテスクな虫を口に加えるシーンなどがあり、物事の2面性を表現していると思われます。
ジェフリーが病院へ行く時、歩いて草むらを横切る
父の病院へお見舞いに行く際、ジェフリーが歩いて草むらを横切るシーンがあるのですが、病院って開けた場所にありそうなので、草むらを横切って着く場所ではないような気がするのですが。
草むらの小屋に向かって石を投げたりするシーンも、ジェフリーの子供心や好奇心旺盛な人間性が出ていて面白いです。結果的にその場所で道草食ったことで、”耳”を発見します。
ジェフリーが”耳”を拾う!
主人公のジェフリーが草むらで見つけたものは人間の耳!「なぜ耳!?キモっ!」と思いませんか?
色んな解釈がありますが、耳をキッカケにジェフリーは事件に深く介入していくことになるので、耳とは新しい体験を聴く=常識の裏側に触れるための切符なのだと思います。耳だけがあるということは、その反対側で耳の持ち主が大変な目にあっているということでもありますしね。
ドロシーはカツラ
ジェフリーがクローゼットからドロシーを覗いている際、ドロシーがカツラを取る場面があります。さりげないシーンですが「えっ?カツラだったの」感がハンパではありません。
フランクのガス吸引器
フランクは喋っている途中でも、怒って興奮している時でも、いきなりガスを吸い出します。常軌を逸している行動ですが、本当に凶暴で異常な人ってこんな感じなのかもしれないと考えさせてくれます。
ブルーベルベットのトリビア
アイデアの元は”ブルーベルベット”という歌
この映画のアイデアの元になったのは、ボビー・ヴィントンが歌うバージョンのブルーベルベットという曲。この曲を聴いたデヴィッド・リンチが作品のアイデアを思いついたのだそう!
曲で映画のアイデアを生み出し、実際に傑作を作り上げてしまう。デヴィッド・リンチ監督の才能は果てしないですね。
ちなみにこちらがボビー・ヴィントンのブルーベルベット!しっとりとした大人の雰囲気の名曲です!
フランクがガスでハイになるアイデアはデニス・ホッパーから
劇中でフランクがガスを常備していて、それを吸っているシーンがありますが、具体的には亜硝酸アルミガスを吸っている設定なのだそう。
当初はヘリウムガスを吸わせて声を時々変える設定だったみたいですが、フランク演じるデニス・ホッパーの提案で亜硝酸アルミガスでハイになる設定にしたようです。デニス・ホッパーってガスに詳しいやばい人なんですね。
ブルーベルベットの魅力
映画ブルーベルベットのどこに魅力があるのか?人によって惹きつけられる部分が違う作品ですが、僕が考えるに、随所の違和感がストーリーに溶け込み、彩りになっている!という点が大きな魅力です。
ジェフリーは善良な好青年→好奇心旺盛で不法侵入・覗きどころか、部屋の住人のドロシーとも肉体関係を持つ。
ドロシーは夫と子供をフランクに拉致されているにも関わらず、フランクに殴られる事に快感を覚える。
フランクは短気で乱暴でガスを吸っており、倒錯的な発言を繰り返しますが、日頃ジャズバーに通いドロシーの歌声に感動している。
話の流れから考えると外しても良さそうな設定を盛り込み、それが作品に大きな彩りを与えています。
実際、僕たちが生きている現実社会では、映画によく出てくるわかりやすい性格の人だけなく、相反するパーソナリティ(性格)を持ち合わせている人もたくさんいますよね。
ブルーベルベットは人の2面性をサスペンスに盛り込むことでよりリアリティを持つ作品になっています。
ブルーベルベット(映画)のまとめ
デヴィッド・リンチの初期の傑作と言われているブルー・ベルベット!改めて解説してみると、不思議な魅力満載ですね!
物事の2面性、違和感のあるパーソナリティやシーン、それらを繋ぐ絵画的な映像とストーリー!観終わったあと、何とも言えない心地良さがあります。それが”ブルーベルベット”なのかもしれません。
この映画については僕が解説した以外にもたくさんの”見どころ”が詰まっていると思いますので、何か意見があればコメントどんどんください!