2019年11月29日初公開となった映画『ドクター・スリープ』は予想を超える完成度の高さで、さまざまな角度から楽しむことができました。『シャイニング』の40年ぶりの続編としても最高です。謎がしっかり解決されています。
この記事では『ドクター・スリープ』あらすじ完全ネタバレで紹介、さらに内容の考察や解説をしていきたいと思います。
下記はサイト管理人(僕)の観賞後の歓喜のツイートです(笑)
『ドクター・スリープ』予想超えの最高でした!シャイニングは善と悪の対立だったが、今作は陰と陽という感じ。ホラーとしても面白く、さらに東洋思想的なメッセージで包まれている。スティーブン・キングらしい倫理上アウトな部分も映像でしっかり表現されていて大満足!ツインピークスの影響も! pic.twitter.com/RUOCPyxw2r
— コーヒー&ベルベット/CineMag(伊良波航太) (@movie_crisis) November 29, 2019
『ドクター・スリープ』基本情報
タイトル:『ドクター・スリープ』 公開年:2019年 監督:マイク・フラナガン 脚本:マイク・フラナガン 原作:スティーヴン・キング 主演:ユアン・マクレガー 出演:レベッカ・ファーガソン 音楽:ザ・ニュートン・ブラザーズ 撮影:マイケル・フィモナリ
監督のマイク・フラナガンはホラー映画の監督や脚本家として知られている人物で、『ザ・ホーンティング・オブ・ヒルハウス』などでメガホンをとっています。
主演のユアン・マクレガーは『トレイン・スポッティング』や『ビッグ・フィッシュ』への出演で有名です。この『ドクター・スリープ』も彼の代表作となるでしょう。
キャストのレベッカ・ファーガソンは、『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』のヒロインで世界的に注目され、トップスターの仲間入りを果たしたスウェーデン出身の美人女優。
『ドクター・スリープ』あらすじ完全ネタバレ
1980年:オーバールックホテルでの惨劇のあと、ダニーの住む家へホテルの亡霊が襲い来る。しかしダニーは、ディックの霊から“頭の中にホテルの迷路と宝箱を思い浮かべて封印する方法”を受け継いでおり、亡霊たちを次々と封じ込めていった。
40年後:アル中になりその日暮らしの放浪生活を送っていたダニー(ユアン・マクレガー)は、ビリー(クリフ・カーティス)という男性と出会う。彼の紹介でアパートを借り、アルコールを断ち、真面目な生活を始めた。
一方、非常に強いシャイニング(超能力)を持っている女子中学生のアブラは、遠くのダニーの存在を見つけ彼と遠隔で交信を試みる。
ある夜アブラは、能力を持った野球少年が、不老不死のローズ(レベッカ・ファーガソン)の集団「トゥルー・ノット」に殺され、生気を吸い取られる強烈なイメージをみる。
野球少年殺人は実際に起こっており、ローズに感知されたアブラも狙われる。
アブラはダニーの元へ助けを求める。
ダニーはアブラに頼まれ、野球少年が埋まっていた場所を掘り起こし、彼のグローブをアブラの元へ持ち帰った。
アブラはグローブから敵の正体を探る。森の中へ向かったアブラを車をローズの仲間たちが襲うが、そのアブラは投影で、本物は家にいる。ダニーとビリーは集まったローズの仲間を銃で撃ち殺していくが、ビリーは彼らに操られ、自分に向けて銃を撃って死んでしまった。
家にいるアブラを、クロウというローズの仲間が誘拐する。しかし、アブラに乗り移ったダニーによって車は事故に遭いクロウは死亡。
ローズを倒すため、ダニーとアブラはオーバールックホテルへ向かう。ローズはダニーを追い、階段で痛めつけるが、彼が頭の宝箱から解放したホテルの亡霊によって殺される。しかしダニーもジャックの霊に取り憑かれ、逃げるアブラを追い詰めた。アブラはジャックの霊に、あなたが乗り移ったのは息子だと言いパワーを弱める。意識が戻ったダニーは、ボイラー室を操作してホテルを爆破。
アブラの側にはダニーの幽霊がいる。亡霊を封じ込める方法を習ったアブラは、自分を追ってきた浴槽の老婆を封印する。
『ドクター・スリープ』登場人物とキャスト
『ドクタースリープ』の原作はホラー小説界の帝王スティーブン・キング。そして映画の監督・脚本はマイク・フラナガンです。その他の登場人物やキャストをみていきましょう。
ダニー(ユアン・マクレガー)
40年前オーバールックホテルで父ジャック・トランスが錯乱した惨劇を目の当たりにし、そのトラウマで酒浸りの生活を送ってきた。小さい頃からシャイニング(超能力)が使える。
アブラ(カイリー・カラン)
非常に強いシャイニング(超能力)を持った女子中学生。ダニーとは遠隔に黒板で文字を書いてやり取り。
ローズ(レベッカ・ファーガソン)
不老不死の謎の女性。肉体を持っており亡霊ではないが人間でもない。8人ほどの狂気の集団「トゥルー・ノット」のリーダーで、超能力を持った人間の生気を吸い取りながら何百年も生き続けている。
ビリー(クリフ・カーティス)
放浪していたダニーにアパートや仕事を紹介する。その後は彼の親友となった。
俳優クリフ・カーティスは映画『MEG・ザ・モンスター』やドラマ『フィアー・ザ・ウォーキング・デッド』への出演が有名。
ディック(カール・ランブリー)
40年前にオーバールックホテルでジャック・トランスに殺された料理長。シャイニング(超能力)を持っており、死んで霊になったあとも、ダニーの元に現れ使い方を教える。
考察:ダニーの運命は40年前に決まっていた
『ドクター・スリープ』の内容を考えるに「ダニーの運命は40年前に決まっていた」ということがいえるのではないでしょうか。ダニーは亡霊たちに襲われ、父のジャック・トランスの霊に乗り移られます。そして斧でアブラに襲いかかるのですが、40年前のジャックとまったく同じ行動をとっており、ここまでくると運命としか思えません。
こうなることは恐らく40年前にホテルを訪れた瞬間から決まっていたのでしょう。
ダニーの頭の中には、常にホテルの迷路と40年前の惨劇のイメージがあった。つまり彼は40年間、亡霊ホテルから精神的に抜け出せていないのです。
ラストのボイラー室で母親のウェンディの霊が出てくることを考えると、ダニーは善悪の枠組みを越えて「オーバールック・ホテル」を我が家のように感じていたのかもしれないです。
だからこそ放浪生活を続け、最後はホテルに戻ったのだと思います。ダニーにとって、ホテルはトラウマを超えてかけがえの無いものになっていたのでしょう。
『ドクター・スリープ』の謎(Q&A)
『ドクタースリープ』で出てくる、シャイニング(超能力)についてなど、とりわけわかりにくいポイントについて解説します。
シャイニングとは?
A.シャイニングは特別な人間が持つ超能力です。具体的には、脳内で会話する、予知能力、遠隔で存在を見つける、物を動かす、幽体離脱などができます。
パワーが強ければ離れた相手に干渉することも可能です。
亡霊を封じ込める方法
A.ダニーは頭の中で、オーバールックホテルの巨大迷路とそこにある大きな宝箱を想像すると、亡霊を封じ込めることができます。
ディックの霊(40年前にジャックに殺された)に教わった方法です。
ローズたちの「トゥルー・ノット」はどんな集団?
A.ローズたち「トゥルー・ノット」は、銃で撃たれれば死亡することから、オーバールックホテルの亡霊とは違う存在だとわかります。
彼女らは肉体を持っており、シャイニング(特殊能力)を持つ人間を殺し、その強力な生命エネルギーを吸うことで不老不死でいられました。大人よりも“生命エネルギー”の純度が高い子どもをよく襲っているようです。
ローズの発言や死ぬときに上がる煙から察するに、普通の人間ではありません。
さらに、ローズたちもシャイニングと似たような超能力を使うことができます。シャイニングが“陽”のパワーだとしたら、ローズたちの力は“陰”と考えることができるのではないでしょうか。
最後になぜ亡霊たちが復活したのか?
A.ダニーがホテルで宝箱の封印を解いたからです。ダニーがわざわざホテルに来たところから、亡霊の封印を特には“オーバールックホテル”という場所も重要だったと考えられます。
キューブリックの『シャイニング』との作風の違い
“善と悪”から“陰と陽”の対立へ
キューブリック の『シャイニング』は、ジャックが悪の亡霊に取り憑かれ、息子のダニーや妻のウェンディを襲うという内容で“善と悪の対立”でした。比較して『ドクター・スリープ』における敵はローズ率いる「トゥルー・ノット」であり、亡霊そのものではありません。
「トゥルー・ノット」は子どもを殺す非道な集団ではありますが、仲間を大切に思う気持ちなど、彼らなりの美学を持ち、おまけにシャイニングと同じような能力も使います。
『ドクター・スリープ』が超能力をどう使うか?という対決になっていることから、今作は『シャイニング』と比べて“陰と陽の対立”という側面が強くなっているといえるでしょう。これは同じくスティーヴン・キング原作の映画『ダーク・タワー』と近い対立軸です。
単純な勧善懲悪ではなく、異なる二つの勢力がバランスを保っているという、より現代風の考え方で描かれているのが『ドクター・スリープ』なのです。
『ドクター・スリープ』は東洋思想が強い
前作『シャイニング』は、ジャック・トランス自身がホテルの亡霊の生まれ変わりだと示唆されたラスト(1921年の集合写真)で終わりました。そして、『シャイニング』では曖昧だった東洋思想的な輪廻というテーマが『ドクター・スリープ』でキレイに回収されました。
さらにダニーとディック、アブラとダニーというシャイニング(超能力)の師弟関係もハッキリと描かれています。
これらを総合すると、『ドクター・スリープ』は『シャイニング』と比べ東洋思想が強まっているといえます。
ローズの集団はツインピークスから?
ローズの集団「トゥルー・ノット」は、恐らくデヴィッド・リンチ監督による伝説的カルトドラマ『ツインピークス』の映画編『ローラ・パーマー最期の七日間』に出てくる謎の集団に似ています。『ドクター・スリープ』の原作者のスティーヴン・キングが影響を受けたのかもしれません。
存在意義がわからず、人がいないところでたむろしている雰囲気がそっくりです。
謎のグループというのは色んな作品で登場していると思うかもしれませんが、目的や存在理由がハッキリしないグループはほとんどないです。
そしてツインピークスの謎の集団は「トゥルー・ノット」と同じように、人間と対立する悪の存在として描かれています。
さらに、「トゥルー・ノット」メンバーのフリックは、ツイン・ピークスで巨人役だったカレル・ストルイケンが演じています。
キングにもリンチにも同じものが見えている?
しかし、スティーヴン・キングにもツイン・ピークスの監督デヴィッド・リンチと同じような、人間ではない謎の暗黒集団が見えているという可能性も捨てきれない。まさか謎の集団は本当に存在して、二人の巨匠には見えているのか?