現代アメリカンファミリーが抱える様々な問題を非常にシニカルに描いたアメリカンビューティー!
アメリカはもとより、現代社会を痛烈に風刺するモダンアート的な作品になった。
ジャンルレスでコメディかヒューマンドラマかサスペンスかわからんが社会問題を笑って考えることができる映画で、映像や構図もスンバラシイ!
因みにアメリカンビューティーはバラの一種。花びらは映像をこれでもかというほど彩ってくれる。
未鑑賞の人は簡単なあらすじや映画の見どころまで、
この映画を深く考察したい・思い出したい・ネタバレOKの人は好きに読んでください。
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本ページの情報は2019年11月時点のものです。
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アメリカンビューティーのキャストや製作陣は?
社会的な問題をコミカルに捉え、アカデミー作品賞も受賞したアメリカンビューティーのキャストや製作陣はこの人たち。
監督 | 主要キャスト | 公開年
製作国 上映時間 |
世界興行収入(円)
|
受賞歴 |
サム・メンデス | ケヴィン・スペイシー アネット・ベニング ソーラ・バーチ ウェス・ベントリー ミーナ・スヴァーリ クリス・クーパー |
1999年
アメリカ 2時間2分 |
391億円 | アカデミー作品賞 アカデミー監督賞 アカデミー主演男優賞 アカデミー脚本賞 アカデミー撮影賞 |
脚本 | 撮影
編集 |
音楽 | 主題歌
|
アラン・ボール | コンラッド・L・ホール
タリク・アンウォー |
トーマス・ニューマン | – |
監督のサム・メンデスは「007スカイフォール」の監督としても有名。この作品は「サンセット大通り(1950)」や「アパートの鍵貸します(1960)」を参考にして作ったもよう。
アカデミー賞総ナメ
アメリカの中流家庭が抱える問題を描いたこの作品はアカデミー賞でも5部門を受賞。(作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞、撮影賞)。非常に完成度が高い社会風刺ムービーを描くことに成功したといえる。
興行収入391億円の大ヒット
興行収入は391億円!1999年の全公開作品の中で第8位!
面白いが正直そこまで稼げる映画か?とちょっと思ったが、テーマ的にアメリカ人が観れば大爆笑なんだろう。
アメリカンビューティーのあらすじと予告動画
広告代理店に勤めるサラリーマンのレスター(ケヴィンスペイシー)は中年になり、夫婦間の危機や反抗期の娘(ソーラバーチ)を抱え、生きる活力を失っていた。そんなある日、娘のチアリーダーダンスを嫌々見に行くと、娘の友達であるアンジェラ(ミーナスヴァーリ)に一目惚れしてしまう!
アメリカンビューティー 登場人物・キャスト
レスター・バーナム=ケヴィンスペイシー
妻と喋ることにストレスを感じ、娘に関心を持たない、生きる希望を見出せない典型的な中年危機の男性。娘のチアリーディングダンスを観に行った際、センターで踊っていたアンジェラにズッキューンしてしまう非常に痛いおっさん。
自分が青春を過ごした時代に回帰し、年下が無害だとわかると調子に乗り出す!「ああ!こんな奴いるいる!!」
この冴えない変態嗜好の中年男性を、ケヴィンスペイシーは完璧に演じ切りアカデミー主演男優賞の栄冠を手にした。
セブンやユージュアルサスペクツからずっと僕のヒーロー!!(ヴィランか、、)
キャロライン(妻)=アネット・ベニング
ヒステリックで上昇志向が強い不動産屋さん。思い込みが強く、自分の趣味を他人に押し付ける。「ああ!こんなオバサンいるいる!!」
中年になり、恥じらいなど、タガが外れてしまった女性をアネットベニングが強烈に演じる。このキャラでアカデミー助演女優賞にノミネートされるが受賞はならず。
アンジェラ(娘の親友)=ミーナ・スヴァーリ
性に対して抵抗がなく、他人を見下す女子高生。
キワどいというか、高校生役なのにモロ上半身裸のシーンもあり、アメリカって1999年当時はコンプライアンスまだゆるいのか?と思ったらミーナ・スヴァーリは当時20歳。ギリOKだったのかな。
ジェーン(娘)=ソーラ・バーチ
レスターの娘で反抗期。彼女もポロリのシーンがあるが、公開当時17歳。ありゃ。今のハリウッドだとアウトな年齢だろう。
リッキー・フィッツ=ウェス・ベントリー
レスター家の隣に越してきた高校生。ハンディカメラによる撮影オタクでマリファナの売人という今作で一番トリッキーな役柄。親への反抗は立場を悪くするだけだと変に達観し、怒る父親に「イエッサー」と返答する。演じるウェス・ベントリーの目力は異常(笑)
フランク・フィッツ=クリス・クーパー
リッキーのパパ。アメリカ軍の大佐で典型的な愛国主義者とおもいきや。。リッキーが悪さをすると躾のために殴る。
アメリカンビューティーの見どころは?
それって問題!社会問題のタネがわんさか!
妻の話にストレスを感じ娘の友人に恋するロリコン親父、綺麗な庭や高級家具を大事にする妻、親に反抗できない男子高校生、マリファナなどなど、そういった問題がアメリカのスタンダードなんだよ!とコミカルに描くから面白い”社会問題のタネ”は日常に潜んでいる。
映像が凝っている
撮影を担当したコンラッドLホールはアカデミー賞常連の超一流マンで、今作でもアカデミー撮影賞を受賞。バラを敷き詰めた幻想的な映像から、日常的なシーンまで、非常に重厚感があって見応えがあるものになっている。
アメリカンビューティーは何点?観るべき映画?
アメリカンビューティーの点数は84点!!すごく面白い場面がありつつも、映像はめっちゃ重厚感があるのでコメディとヒューマンドラマの中間のような、他の作品にない雰囲気が出来上がっている。
ただ、文化の違いから、アメリカ人にバカウケ間違いなしの場面でもスルーしてしまう可能性がある。ところどころに笑いが詰まっていると意識して観たほうが絶対にいい!!
68%くらいの人間は楽しめるであろう作品。
※以後ネタバレになりますので、まだ映画を観てない人は絶対に次の項目には行かないでください!
アメリカンビューティーが84点Aランク評価の理由
映画の各要素(10点満点中)
ストーリー | キャスト・演技(ハマり役) | テンポ | 演技・シーン |
8 | 9 | 7 | 10 |
セリフ | 映像の見やすさ(構図) | 音楽・楽曲 | 印象度(記憶に残る) |
8 | 10 | 7 | 7 |
序盤・中盤・ラスト(5点満点)
序盤 | 中盤 | ラスト・結末 | 話の筋が通っているか? |
5 | 3 | 5 | 5 |
各要素と、序盤・中盤・ラストの合計を100点満点とし計算しています。
結果アメリカンビューティーは
84点 Aランク評価 ☆(星)4.2
あらすじ結末 ネタバレあり
序盤
娘であるジェニー(ソーラ・バーチ)との関係を修復するため、無理矢理高校のチアリーディングダンスを観させられたレスター(ケヴィンスペイシー)は娘の親友であるアンジェラに一目惚れしてしまう。
その恋愛感情を異常だと気づかず、アンジェラと数回会話しただけですっかりその気になってしまい、ランニングや筋トレを始めるなどハツラツとし出す。冴えないおっさんから痛いおっさんへ様変わり!
隣にはジェニーを盗撮するリッキーと、典型的なアメリカ軍人フランクの親子が引っ越してくる。リッキーはドラッグの売人もやっており、レスターは調子こいて彼から最高級品を買う。
中盤
キャロラインは不動産で成功している通称”キング”といい歳こいて不倫関係に。
レスターは会社の社長のスキャンダルをネタに多額の金を受け取り退職。
ファストフードのドライブスルーで働いていたところ不倫中のキャロラインを見つけ、弱みを握ったレスターはキャロラインに今後は口出しするなと言い放つ。
終盤
アンジェラが家に泊まりにきていて興奮して筋トレをする痛いレスター。マリファナがなくなったので隣のリッキーに電話するが、一連の行動をみていたフランク大佐はレスターとリッキーが”ゲイ”の関係だと知り、リッキーを勘当し家から追い出す。フランク大佐は筋トレ中のレスターを訪ね泣きながらキスする。
ラストのオチ・結末
レスターはアンジェラの服を脱がせるが、彼女が実は一度も経験がないことを知り、はっと我にかえる。
抱かれたいというアンジェラをさとし、ジェーンやキャロラインなど、自分の人生は美しいもので溢れていると気づく。レスターが感傷に浸っていると1発の銃声が鳴り響く。
レスターは後頭部を撃たれ死んでいたが、顔には満足げな笑みが浮かぶ。それを見て取ったリッキーも微笑むのだった。
フランク大佐が血と雨で濡れたTシャツを着て泣いている。
レスターは死を直前に人生の全てを回想。
ラストのオチや結末を徹底考察!
なぜ大佐はレスターを撃ち殺したのか?
それにはまず、大佐がレスターにキスするシーンの意味を考えることが大事である。
一見意味不明で、レスターがゲイかどうか確かめているのか?と思ってしまうが、そう考えてしまうと面白くない!レスターはその後「あんたは勘違いしている」と言っているので、ゲイなのかどうか確かめていたなら疑いが晴れたレスターを殺す動機はない。
実際はフランク大佐自身がゲイであり(コレが第一のオチ)、それがノンケのレスターにバレてしまったので殺した(第二のオチ)と考えるのが妥当だろう。
フランク大佐は立場や教育上ゲイを忌み嫌う発言をしていたことに加え、息子を勘当して失意の底にあったという条件もあり、混乱してレスターを撃ち殺すという悲劇に走ってしまったのだ。
エンディングを勝手に改変
アメリカンビューティーでラストでは、フランク大佐が血だらけになっていたので、彼が犯人だったということがわかるが、あえて誰が殺したかわからない!というオチも面白いのではないか?
アメリカを象徴するウザイ妻キャロラインや、ティーンエイジャー代表の気取ったアンジェラにもう少しだけ動機を持たせればそれも可能だったと思う。
誰がレスターを撃ったのかわからなければ、アメリカが抱えている問題それぞれが彼を殺す可能性があるという抽象的なラストになる。
まあでも、製作陣はあまりサスペンスチックにしたくなかったのかもしれない。
好きなシーン時系列
ゴミ袋が舞っているシーンに感動するリッキー
リッキーはジェーンを部屋に呼び、一番美しい映像ということで、ゴミ袋が同じ場所で宙に舞い続ける映像を見せている。「美しいと思っているものは実際はゴミだ!」というアイロニー(皮肉)な表現とも捉えられるが、僕は逆にゴミに美しさを見出すリッキーの感性と、それに感動するジェーンの姿に感動した。
まさに素晴らしいモダンアートの世界であり、見る人によって解釈が違う”事象”の一例である。
窓のジェーンを映すリッキー
窓辺でこちらを向いて服を脱ぐジェーンをリッキーがビデオカメラで撮影するのだが、リッキーがモニターに映しているものを流しているので、ジェーンの方向からみると、リッキーと大画面に映る自分の姿が見える。それが窓越しなのがとても良い。非常に考えられた構図。
アンジェラとの会話で自分を見つめ直すレスター
アンジェラを抱くことはせず、自分を見つめ直しながら会話するレスター!自分がすでに持っていた幸せや美徳を噛みしめる彼の佇まいに心が揺さぶられる。ケヴィン・スペイシーの演技に感服!
死んだレスターを見て微笑むリッキー
死んだで血で染まったレスターの顔が笑っていたのを見て、「彼は幸せに旅立てた」とでもいうかのように一人納得して微笑むリッキー。
アメリカンビューティーは死を越えたところにあったのか?とても考えさせらるシーン!
なんかリッキーばっかりで、今更自分が彼のキャラを好きだったと気がつく。
アメリカンビューティー 最高の皮肉
主人公のレスターは最後に娘や家族の大切さといった美徳を思い出すのだが、そのキッカケはロリコン恋愛であり、結果死んでしまう。
社会的に許されない嗜好を抱かなければ、いわゆる”アメリカンビューティー”を感じることもなかった。さらに美徳を感じられた瞬間死んでしまうのだから皮肉が過ぎる!!
考え得る最高の皮肉を見せつけてくれるのが、このアメリカンビューティー!
フランクザッパの”あの曲”を思い出す
アメリカンビューティーを観ていると、なんだかフランクザッパの「Bobby Brown(ボビーブラウン)」という曲を思い出してしまった。
この曲はボビーブラウンというモテモテ青年が、思い描いていた未来予想図と違う道をたどる(ゲイになる)というもの。
アメリカ的な美意識や大義を信じ続けていたが、いつ間にか本来居たかった道をそれてしまうというアメリカンビューティーに近い内容。
日本語訳の歌詞もあるので興味がある人はぜひ聴いてみるといい。
アメリカンビューティーの感想・解説まとめ
近代アメリカ最高の皮肉をみせつけてくれたアメリカンビューティー!!見応えがあったし色々考えることができた!
バカバカしく痛い描写を重厚な映像で撮影し、モダンアート的な要素も含めた今作は、ジャンルの枠に囚われない傑作になった。
こういったオリジナリティーが高い名作がこれからも生まれ続けることを願い合掌!!