マーティン・スコセッシとやら「MCUは映画じゃねえ!!」アベンジャーズは投資家のヒーロー!?

マーティン・スコセッシ

2019年の11月27日にNetflixで最新映画「アイリッシュマン」の公開を控えるマーティン・スコセッシとやらのロックな発言が物議を醸している。

それは「MCUは映画じゃねえ!!」という、パンク少年のような口ぶりだった。

かなり過激なこの発言。MCUファンはもちろん怒り心頭。好きなヒーロー映画をバカにされて怒るのは至極当然である。

しかし、この「MCUは映画じゃない」発言の裏には、「映画の未来を守りたい!」という、おじいちゃん(スコセッシ)の力強いメッセージが込められているのだ。

どういうことか、わかりやすく説明しよう。

それから、これを機会にMSU(マーティン・スコセッシ・ユニバース)も観てあげよう!

問題は映画に多様性がなくなること

2008年、『ダークナイト』が世界を席巻しアメコミ映画ながら1000億円以上の興行収入を叩き出した。マーベルの『アイアンマン』の公開も2008年。この頃にみんな気づいてしまった。

クオリティさえ担保すれば、大人も子ども観られるヒーロー映画が一番稼げると・・・

それから11年、『アベンジャーズエンドゲーム』がアバターの興行収入を抜き、27億9020万ドル(2800億円超)という前人未到の大記録を打ち立てた。歴代興行収入のランキングはヒーロー映画で溢れている。

しかし、MCU大好きなキミはこう反論するだろう「ヒーロー映画面白いから別によくね?」

確かにヒーロー映画は面白い。めちゃ面白い。筆者もマーベルとDCコミックの映画は大体観ている。

ヒーロー映画が流行ることは直接的な問題ではない。

代償として、アメコミ映画など、ヒットしやすい映画が優先して作られるようになってしまったのだ・・・

一方、なんかちょっと小難しい系の映画には資金が全然集まらず、製作できなくなっていった・・・マーティン・スコセッシも『沈黙-サイレンス-』で大赤字を出して、資金が集まりにくくなっているようだし(アイリッシュマンは制作費が集まらず、Netflixが出資した)、あのデヴィッド・リンチ監督なんかは、2006年に『インランド・エンパイア』を作った時点ですでに、全然資金が集まらず、元嫁から借金までしたそうだ。

劇場で公開されるような作品がヒーロー映画ばかりになったら、それ以外の映画を観られる機会が減るということなのだ。

ヒーロー映画の投資回収率がズバ抜けて高いのが根底

一般的に世界的な大ヒットと呼ばれる作品は、どれくらい稼ぐだろう。大まかにはなるが、2億ドル(200億円)もいけば大ヒットと呼んで差し支えないだろう。

2億ドル稼ぎだそうとしている映画に出資したA社はウハウハ!ところが、その横でヒーローたちの大活躍がはじまった!

ヒーロー映画は親子で観れるので、大人向け映画と比べると、そもそもパイが大きいようだ・・・

アベンジャーズは20億ドルの興行収入も夢じゃない!そこへ出資していたB社は超勝ち組でごんす!

一方、収益が2億ドルの映画に出資したA社は、B社から「負け犬でごんす」といわれて泣いた。

要するに、投資先としてヒーロー映画の回収率(お金が返ってくる割合)がズバ抜けて高いのがハッキリしてしまったのがこの問題の根底にあるのだ。

今やアベンジャーズは、一流の投資家からみても立派なヒーロー!(参考→ハリウッド俳優のコスパ)

結果、ヒーロー映画が量産され、それ以外の映画に資金が集まりにくい流れができてしまった。例えば今、「タクシードライバー」のような革新的映画を作りたいと言ったら、企画段階で速攻NGが出るだろう。

タクシー・ドライバーのトラヴィス

きっとスポンサーにこんな感じで断られる・・

芸術性が高い映画や、難解な映画などはそもそも資金回収できるかも怪しく、もっての他となってしまったのである。

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ヒーロー映画すらつまらなくなる?

ここまでの話を極端に考えれば、アメコミ映画しか観ないたちは「まったくもって問題ない!」と言うかもしれない。しかし、この考え、実はけっこう危ないのだ。

現状のアメコミ映画は、社会派だろうがコメディだろうが、どんなジャンルでも作れちゃう優秀なスタッフが集結しているからこそ、大人でも十分楽しめる最高のクオリティになっている。

しかし、今後はアメコミ映画しか作ったことない人が、アメコミ映画を作るという時代になるかもしれない。

さまざまな映画を製作してきたスタッフが作ったアメコミ映画と、アメコミ映画しか作れない人のアメコミ映画。どちらが完成度が高くなるだろうか。

よく言われている、「アニメばかり観てた人が作り手になったから、今のアニメは面白くない!」というのと同じ理屈だ。

まあ、これはただの理屈なので、単純にそうはならないと思うが、「昔のアメコミ映画の方が面白かった」という未来になってしまったら笑えない。

これが、スコセッシ監督発言の本質で、多様性がなくなると業界全体のクオリティが下がってしまうということだ。

解決策はないの!?

結論からいうと解決は非常に難しい。

なぜなら、同じクオリティなら観る年齢層が幅広いヒーロー映画の方が何倍も稼げるからだ。

そもそも僕らが騒いでどうにかできる程度なら、おじいちゃん(スコセッシ)がとっくに解決しているだろう。

具体策としては、

  1. 子どもがハマるマフィア映画をスコセッシ監督につくってもらう
  2. アイアンマンの死ぬ間際の夢をデヴィッド・リンチ監督に映画化してもらう

くらいしか思いつかない・・・

他にできることといえば、MCUだけでなく、MSU(マーティン・スコセッシ・ユニバース)をたくさんの人が観るべきだろう。

ハリウッド、そして日本映画界の未来はいかに・・・

ABOUTこの記事をかいた人

フリーライター/映画評論家/沖縄県在住のアラサー男子 誕生日は3月27日でクエンティン・タランティーノと一緒。 中学のとき、友だちに『シックス・センス』のネタバレをされトラウマに。バンドや作詞作曲活動も行っており、2019年は田港栄輝監督の『ストレプトカーパス(2020年公開予定)』という映画への出演と楽曲提供をしました。 傑作映画を求めて彷徨うムービーファントムであり、どんなジャンルにも食いつきます。“どのサイトにもない考察”を目指しており、その映画をもっと深く知りたいという人の手助けをするために日々奮闘しています。 好きな映画は『マルホランド・ドライブ』『ユージュアル・サスペクツ』『パルプ・フィクション』。好きな監督はデヴィッド・リンチ、マーティン・スコセッシ、クエンティン・タランティーノ。 【海外ドラマ】『ウォーキング・デッド』『ツイン・ピークス 』 【マンガ】『ジョジョの奇妙な冒険』『ハンター・ハンター』 【音楽】NIRVANA、プリンス、ブルーノ・マーズ