悪への羽化!『Joker(2019)』ホアキンは歴代最高のジョーカーか!?ニーチェ哲学的?批判を考察!アメコミが芸術に!

ホアキン・フェニックス ジョーカー

2019年10月4日!公開当日に『Joker(2019)』を観てきた!

上がりきった期待を軽く超えるホアキン・フェニックスのジョーカーに悪寒が走る。走り方や仕草、すべにおいて尋常じゃない。

個人的にはダークナイトでヒース・レジャーが演じたジョーカーを完全に超えたと考える。(スーサイド・スクワッドでジョーカーを演じたジャレット・レトがこの映画を見たらショック死するだろうな・・・)

映画ジョーカーは作品全体として考えても、アメコミ映画ながら芸術性抜群で、本年度のアカデミー賞も期待できる出来栄えだと感じた!(ベネチア金獅子賞獲ってるし。)

この記事では、あらすじ・ホアキンジョーカーの凄さ・作品としてどう楽しめたかを語っていくので、お付き合い願いたい!

※ここから完全ネタバレ有り

ジョーカー映画のあらすじネタバレ

精神病院から出たアーサー(ホアキン・フェニックス)は、市が運営するカウンセリングを受け薬を飲みながら、イベントのピエロとして働いていた。脳の神経の問題(トゥレット症)で、突然笑い出してしまうため、周りから気味悪がられることが多い。

アーサー(ホアキン・フェニックス) ホアキンフェニックス ピエロ

アーサーはボロアパートで、介護が必要な母ペニーを世話していた。母は30年前にウェイン邸で働いていたことから、トーマス・ウェインに貧困から救ってくれと何回も手紙を出している。アーサーにとって、有名司会者マーレイ(ロバート・デ・ニーロ)の番組だけが、世の慰めだった。

ある日、ピエロとして店頭で宣伝していると、不良たちに看板を取られ、ボコボコにされてしまう。

走って逃げるホアキンフェニックス

上司はアーサーに非があると彼を責め、さらにアーサーは次の仕事で、同僚にもらった拳銃を児童施設で落としてしまうというヘマをしたため、首(クビ)になる。

地下鉄で自暴自棄になって笑っていたアーサー。
ウェイン証券の3人組がちょっかいを出してきたので、突発的に銃で3人を射殺。
アーサーは公衆トイレで何かに解放されたように踊った。

踊るジョーカー
アパートに帰ったアーサーは、かねてから気を寄せていた、同じ階のシングルマザーソフィーの部屋に入り、キスをする。

ピエロが金持ちを殺したというニュースが広まり、貧困層の不満が爆発。ピエロの仮面を被ったデモ集団が、ゴッサムの富裕層に向かって訴える。

アーサーは、母親ペニーが書いたウェイン宛の手紙を読むと、自分がウェインの息子だという文章が書かれていた。ウェイン邸に行ったアーサー。門の側に小さな少年ブルースがいる。アーサーは手品を見せ、二人は少し話をする。しかしアーサーは駆けつけた門番に追い払われ、母ペニーが狂っていたと言われてしまう。

母親のペニーが脳卒中で倒れる。アーサーの側にはソフィーもおり、病院のベットに横たわるペニーを二人で見守っていた。

富豪が集まるシアターに忍び込んだアーサーは、トイレでトーマス・ウェインから母ペニーが狂って精神病院に入院していたと聞かされる。アーカム精神病棟に行き受付に確認すると、確かに母親の記録があった。アーサーは記録簿を奪って逃げ、詳しく読んでみた。すると自分はペニーの養子であることがわかり、ペニーの恋人から酷い虐待を受けていたと知る。アーサーの病気も虐待による後遺症であった。

アーサーは、入院しているペニーを枕で窒息させて殺害。太陽の光が病室に差し込む。
夜、ソフィーの部屋に入ると、アーサーを見つけたソフィーは怯えていた。実は、アーサーと一緒に行動していたように見えたソフィーは、彼が作り出した妄想で、実際にはソフィーと恋人関係ではなかったのだ。

アーサーは顔を白塗りにする。アパートを二人の元同僚が訪ねるが、アーサーは一人の男の頭を潰して殺す。

スタンドアップコメディによる嘲笑(ちょうしょう)がオーディエンスに受けたため、マーレイのTV番組に呼ばれたアーサー。

ロバート・デ・ニーロ(マーレイ)

この映画の参考にされたキング・オブ・コメディの主演ロバート・デ・ニーロが司会者を務めているのが面白い。

彼はTVの前で、地下鉄で3人の証券マンを殺したのは自分だと言い、マーレイを射殺した。

ピエロの仮面を被ったデモ集団が、ゴッサムの街を練り歩き破壊する中、アーサーはパトカーで運ばれる。次の瞬間パトカーにトラックが追突し、ピエロの仮面を被った男たちが、気絶しているアーサーを車のボンネットの上にのせた。アーサーは立ち上がり。自分の血で大きな“口”を描いた。

アーサーは精神病棟でのカウンセリング時に、ジョークを思いついて笑っていた。

ジョーカー(Joker)映画あらすじ(ネタバレ)  END!

もはや芸術!ホアキン・フェニックスのジョーカー

マーティン・スコセッシのタクシー・ドライバーを参考にしたストーリーと役作りもガッチリハマり、ハッキリ言って歴代最高であり、最狂だと思う。

髪型やメイク、ホアキン・フェニックスのガリガリの体づくりが相まって、芸術性が高いヴィランになっていた!

ストーリーも込みで、とうとうアメコミ映画が芸術の域にまで達したのが『ジョーカー』といえるだろう。

具体的に良かった点を挙げていく。

まず、ホアキン・フェニックスはメイクしていない状態でも、血色がとても悪く、すでにスリル満点の怖さである。病気でおかしな笑い声を響かせるのだが、完全に狂気と言っていい。まだジョーカーになってないにも関わらずだ・・・

鏡で泣くアーサー(ホアキン・フェニックス)

そして、メイクをした後は完全に狂気の向こう側に行ってしまった。もはや迫力があるなどと言う言葉では片付けられず、異質なオーラを身にまとった最狂ヴィランと化した。

ピエロメイクで3人の男性を射殺し、公衆トイレで太極拳のような奇妙なダンスをみせる(即興らしいねこのダンス)。ジョーカーのメイクをして廊下を歩く、背後から光が照らす何気ない瞬間に覗かせる顔の表情は、かの哲学者ニーチェがいっていた“深淵”そのものじゃないか?我々は深淵を見つめているのか?彼は人間を超えた何かなのか?背筋が凍りつくとはこのことだ。

ニーチェが著書「ツァラトゥストラはかく語りき」で言っていた“超人”とは、もしかするとこのジョーカーのことかもしれない・・・

単に悪に変化したのではなく、悪に羽化した。これがホアキン・フェニックスのジョーカーに対する僕の感想である。

歩くホアキン・フェニックスのジョーカー

バットマンとの因縁も綺麗に描いた

映画『ジョーカー』では、アーサーがジョーカーになった理由だけでなく、バットマンとの因縁もしっかりと描けていた。

アーサーがブルース・ウェインと異母兄弟だという嘘か本当かわからない件から始まり、なんとアーサーは幼いブルースに会い手品をみせて顔を触る。

そして、アーサーがトーマス・ウェインに、トイレでクズ扱いされ、殴られるということまで発展。

そしてラストでは、アーサーの殺しがキッカケで発展したピエロ暴動者が、逃げたトーマス・ウェインと彼の妻をブルースの前で射殺。

バットマンVSジョーカーの対立図式。そして、お互いがいなければ二人とも存在しないという、存在理由についても綺麗に描けていた。

どんでん返しの連続!サスペンス映画としても秀逸

映画『ジョーカー(Joker)』は、サスペンス映画としても秀逸な作品だった。作中で描かれた、主などんでん返しをリストアップしてみよう。

1 バットマンと異母兄弟かも

母ペニーの言い分だと、アーサーとブルース・ウェイン(バットマン)は異母兄弟ということになる。ストーリー上では、ペニーの証言が間違っている感じだったが、真相はわからない。

2 母ペニーは元精神病患者

母のペニーが30年前、アーカム・アサイラム(精神病院)に入院していた履歴が確かにあった。アーサーは母の虚言にずっと騙されていたのか!?

3 アーサーは虐待が元で、脳の神経がおかしくなった

アーカム・アサイラムの資料によると、アーサーの脳の神経の損傷は、児童虐待が元で起こった可能性がある。信じていた母に裏切られたと感じた瞬間。

4 恋人のソフィー像が消えた!

アーサーの側で彼を支えていたと思われたソフィーだが、実際にはそばに居なかった。そばにいるのはアーサーが作り出した妄想である。

本物のソフィーはアーサーを同じ階の住人としてしか知らない。

5 精神病院から出ているのかいないのかが謎

アーサーは序盤のカウンセリングでは、精神病院からすでに出ているということだったが、最後に精神病院がくる理由は!?もしかすると・・・彼はずっと精神病院を出ておらず、すべて彼の妄想だったのでは!?可能性がないとは言えない。

映画ジョーカーには、サスペンスチックな、どんでん返しが多いとお分かりいただけただろう。しかも、アーサー自身が狂っているので、何をどこまで信じてよいのか、誰にもわからない(これまた上手い作りになっている)。

ジョーカー誕生の物語を描いたが、未だ謎を含んでまっせ!ということだろう!

ベールを脱いだジョーカー。しかし、全てがジョークだと言わんばかりに、物語は謎を持ち続けているのだ。

社会、親、尊敬、すべてから裏切られたアーサー

なぜアーサーが、ジョーカーになってしまったのか!?

映画『ジョーカー(Joker)』では、このポイントについても非常に上手く描かれている。

なぜジョーカーになったかの理由をリストアップしていくと、ああ・・・とても悲惨なことがわかる。

  1. 精神病院に入れられる
  2. 脳の神経の問題で世間からキミ悪がられる
  3. 自分がトーマス・ウェインの子供だった
  4. 社会の富の象徴トーマス・ウェインから母が狂っていたと告げられる
  5. 自分は養子で、母の恋人から虐待を受けていた
  6. 尊敬していたマーレイに笑い者にされる

アーサーがジョーカーとなった理由は決して浅くない。リストをみれば、社会、親、尊敬、全てに裏切られ、奈落のそこに突き落とされたことがわかる。

アーサーは、彼が生きる理由すべてに裏切られたといえるだろう。

ゴッサムシティという社会の螺旋階段から、華麗に転がり落ちたのだ。

映画ジョーカー(2019)の批判に反論

ジョーカーは個人的に超傑作だと思っているが、批判の声も多くある賛否両論の作品なのだ。

ここでは映画ジョーカーに対する批判について良くあるものを考察し、反論などしていこうと思う。

この物語ジョーカーじゃなくてもよくね?

この映画の主人公がジョーカーじゃなくてもよかったという意見は、一見まとを得ている気もするが、わりと抽象的で、ただ煙に巻いているだけのような印象を受ける。

だいたい、ジョーカーじゃなかったら、最後に悪のカリスマになって、暴徒を支配するというラストはどうなるのか?ジョーカーじゃなかったら話し的に“オチない”というところを、完全に見落としている考えだ。

まず、ジョーカー以外のキャラであのラストが成立する具体例はあるのか?
壊れたアーサーが、マフィアになりました、革命者になりましただったら、今回のストーリーではかみ合わない!

この映画はリアリティある作りなので、ゴッサムシティとジョーカーという背景がなければ、悪のカリスマになった後、機動隊に鎮圧されないのか?という変な疑問が残り、リアリティが失われる。

あと、今回のジョーカー物語は、単純に孤立から悪への変化を描いているのではなく、悪への進化や生まれ変わりを表しているので、この点もジョーカーじゃないとキツイ。

ちょっとだけ論点がズレるが、そもそも「この物語は〇〇が主人公でなくても良い」という主張は、どんな作品にも通用する具体性に欠ける言葉だということ。(特にキャライメージとストーリーが浸透していない段階では言いたい放題言える。)イメージが観衆にどのように捉えられているかという側面が強い。

そして仮に、イメージとキャラがバッチリだったとしても「ターミネーターはシュワちゃんじゃなくてよくね?あの話なら、スタローンでもよくね?」と言うこと自体は可能だ。

特に今回のジョーカーじゃなくてよくね!?という主張の場合、ジョーカーのような有名キャラクターの映画が冒険したストーリーになったので、今までのジョーカーと違うという保守的な感情が働いたのだと考える。このキャラはこうでなくてはいけないという固定観念が、まず前提としてあるのだ。

そんなこといったら、DCキャラクターが今後チャレンジできなくなる。

ジョーカーが元はいい人という設定がダメ

ジョーカーが元はいい人という設定が、今までのジョーカーのキャラ設定を壊すという主張。しかし、ジョーカーとなったアーサーは本当にいい人か?

母親の世話をしているからそう見えるだけで、精神病院に入っていた理由もわからない変人である。怒られたらゴミ箱を全力で蹴りまくる人間である。どちらかというと、母親にすがっていると言った方が正しいだろう。

アーサーは、いい人というよりはすべてを受け入れてしまい、跳ね除ける力もない悲しい人間に映る。

単純に、いい人だとはいえない。元から明らかな変人だし、社会に疎まれる存在だ。

ジョーカーの純粋悪という設定が崩れている

過去の設定をどこまで守るかという話。

アーサーがいい人ではなく、もともと変人で、変人・奇人→ジョーカーという変異を遂げていると考えれば、純粋悪だということもできる。

ホアキン・フェニックスの演技にはそれくらいの凄みがあった。

誰もがジョーカーになる可能性があってつまらない

アーサーという人物について、いい人以外の要素をしっかり考えれば、誰でもなれるという訳ではないとわかるはずだ。

さらに、一気に仕事・社会・親・恋人(妄想だけど)・尊敬を失ったという、偶然が奇跡のように重なったというのも大きいだろう。

悪に共感し、許容する危ない映画だ

相当影響力を持ったらもちろんやばいかもしれないけど、それをいったらアート系の映画や犯罪・マフィア映画など、全部作れなくなる。映画全般に言えるが、悪や背徳者の気持ちを描くというのは、反対に良い社会や良い人間も浮き彫りにできるので、とても意義があることなのだ。

映画ジョーカーのまとめ

ということで、『ジョーカー』は最高の映画だったわけだ。

シリアス度が物凄く高く、もはや単なるヒーローやヴィラン映画としての枠を完全にはみ出している。アメコミチックな派手な仕上がりを期待したファンには受入れられないかもしれない。

しかし、それでも2019年、確かに新たなジョーカーが誕生した。狂気の理由をたずさえて悪に羽化した、歴史上最狂のジョーカーだ。

ジョーカーに羽化したアーサー(ホアキン・フェニックス)

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フリーライター/映画評論家/沖縄県在住のアラサー男子 誕生日は3月27日でクエンティン・タランティーノと一緒。 中学のとき、友だちに『シックス・センス』のネタバレをされトラウマに。バンドや作詞作曲活動も行っており、2019年は田港栄輝監督の『ストレプトカーパス(2020年公開予定)』という映画への出演と楽曲提供をしました。 傑作映画を求めて彷徨うムービーファントムであり、どんなジャンルにも食いつきます。“どのサイトにもない考察”を目指しており、その映画をもっと深く知りたいという人の手助けをするために日々奮闘しています。 好きな映画は『マルホランド・ドライブ』『ユージュアル・サスペクツ』『パルプ・フィクション』。好きな監督はデヴィッド・リンチ、マーティン・スコセッシ、クエンティン・タランティーノ。 【海外ドラマ】『ウォーキング・デッド』『ツイン・ピークス 』 【マンガ】『ジョジョの奇妙な冒険』『ハンター・ハンター』 【音楽】NIRVANA、プリンス、ブルーノ・マーズ